【事例を解説】アパート経営の失敗事例と成功させる方法

アパート経営を行う上でのリスク
アパート経営を行う上で、まずはどのようなリスクがあるのか把握しておくことが大切です。
特に代表的なリスクは、「空室増加と家賃下落」「入居者トラブル」「修繕費」「自然災害」の4つです。
ここではこの4つを具体的に解説してきます。
1.空室増加と家賃下落
アパート経営で最も避けたいリスクが「空室」です。
長期的な空室に陥ってしまうと家賃収入が減ってしまうため、空室期間を短くする対策を行わなければいけません。
また、家賃水準が高めな新築アパートは、年数が経過するとともに家賃水準が下がるのが一般的です。ある程度の家賃下落は想定の範囲内かもしれませんが、周りと差別化を図れていないアパートや耐久性の少ないアパートを建ててしまうと、家賃の下落幅が大きな影響を与えてしまいます。
このような、長期的な空室や家賃下落を回避するためには、不動産会社やハウスメーカにサブリースして家賃保証を行ってもらう方法もありますが、これも万全ではありません。
※サブリースとは、不動産会社等やハウスメーカーが賃貸オーナーからアパートを一棟借り上げることで、アパートの稼働率に関わらず不動産会社やハウスメーカーから一定の家賃収入を保証してくれるシステムです。
しかし、賃貸市場が悪化してしまうと、サブリース賃料が下がってしまうリスクもあるため注意が必要です。
2.入居者トラブル
アパート経営を行っていると、家賃滞納や騒音、ゴミ出しのルールを守ってくれいない、などのマナー違反を行う入居者が出てくる場合がある。
このようなマナー違反を行う入居者が原因で、他の入居者が退去してしまうケースもあるため非常に悪循環です。
入居時に入居審査を行ったとしても、このようなトラブルを起こす入居者を100%回避するのはなかなか難しいのが実情です。
3.修繕費用の発生
アパート経営では、大小問わず修繕費用が発生します。修繕が必要となるタイミングや価格帯は予測しにくいですが、中古アパートより新築アパートのほうが修繕費が安いのは明白です。
アパートが老朽化していく中で、外壁や共用部分などの計画的な修繕は欠かせませんが、急な修繕が発生してしまう場合もあります。
アパートの外壁、屋根、廊下といった外観や共用部な補修だけではなく、入居者が暮らす専有部の給湯設備やエアコンなどが故障した場合も賃貸オーナーの費用負担となります。しっかりとメンテナンスや点検を行い、アパートの価値を維持することが大切です。
4.自然災害
地震や台風、津波によるアパートの倒壊や火災、土砂崩れなどの自然災害が起きてしまうと大きな損失となります。
地震などの災害に強いアパートを建設し被害を最小限にするとともに、「火災保険」「地震保険」「住宅総合保険」などの保険に加入することも大切です。
アパート経営が失敗する理由
アパート経営が失敗する理由には、大きく分けて「計画段階で失敗している場合」と経営に問題があって失敗している場合」「に分類されます。
具体的には以下の理由が挙げられます。
1.計画段階で失敗している場合
- 施工会社の選び方に問題がある
- アパートの間取りに問題がある
- 賃貸需要や立地を見誤っている
- 借入金が多額/過剰
- 利回りの高い数値に踊らされている
- サブリースを理解していない
2.経営に問題があって失敗している場合
- 大規模修繕の資金不足
- 空室対策が失敗した
- 管理会社選びで失敗
- 入居者トラブルで失敗
それでは上記の中から最も代表的な事例を9つ解説させて頂きます。
アパート経営の失敗事例9選
1.施工会社の選び方に問題がある
アパート経営が失敗する最も代表的な要因は建設時に依頼した施工会社の施工不良によるモノです。
いざアパートの建設をお願いしても、その質が悪いと以下の問題が発生します。
- 漏水がしやすい
- 悪臭がひどい
- 上下階や隣の音が聞こえてくる
これらの問題が原因で入居者に退去されてしまったり、入居が決まりにくかったりします。
特に、スピード重視の低価格で請け負ってくれる施工会社にお願いしてしまうと、後で後悔する場合もあるので、施工品質が高いハウスメーカーに依頼するのが得策です。
また、「施工の品質が高い=建設費が高い」というわけではありません。
国内の大手ハウスメーカーはアパート建設に「工業化工法」という手法を導入しており、ほとんどの部品は、現場でなく工場で作っているため、施工品質が高いアパートを供給しています。
更に、現場ではその部品を組み立てるだけなので工期も短いのが特徴です。このように大手のハウスメーカーは、「高品質で低価格、そして早い」「高品質で低価格、そして早い」とったアパートの建設を行う上で最も重視したい内容を網羅しています。つまり施工会社を選ぶ際は、大手であることと、信頼に足りる施工会社なのかを軸に選定すると、失敗を回避できます。
2.アパートの間取りに問題がある
アパートの間取りに問題があるために失敗してしまうケースもあります。
特に新築時で2LDKや3LDKのようなファミリータイプに向けた間取りにしてしまうと、失敗しやすくなります。
ファミリータイプは、広い面積で家賃も高いため、賃貸需要があまりありません。そもそも多くのファミリー層は家賃を払い続ける賃貸よりも、購入を検討します。
つまりアパート経営を成功させたいなら、単身者用の間取り(1Kまたは1LDK)で行った方が成功確率は高いです。
例えば、首都圏で駅近の立地であれば、単身者の賃貸需要が高いため1Kやワンルームタイプが望ましいです。一方で、郊外周辺なら広めの部屋を希望する単身者が多いため、1LDKや2DKといった間取りも良いでしょう。
間取りはエリアによって需要が異なるため、エリアの需要に合った間取りを選ぶことが大切です。
3.賃貸需要や立地を見誤っている
アパート経営は、「立地商売」と言われるほど立地が要です。
例えば以下の立地はアパート経営が難しいと言われている立地です。
- 駅から遠い
- 生活に不便
- 周辺に働く場所がない
このような需要が低い立地にアパートを建ててしまうと、失敗するリスクは高まります。
特に相続対策としてアパートを建築する方にこの失敗は多いです。
相続の対策を行う際に、「保有している土地を活かそう」というなんとなくのイメージでアパート経営に踏み出してしまうため、賃貸需要が低いにも関わらずアパートを建設するケースがよくあります。
このように「立地」による失敗を避けるためには、アパート経営を検討する段階で、需要がある立地かどうかを見極めることが大切です。
また、アパート経営にこだわらず、選択の幅を広げてみるのも良いです。そもそも保有している土地がアパート経営に不向きなら買い替えも視野に入れましょう。
4.借入金が多額/過剰
アパート経営は借入金の借り過ぎが原因で失敗するケースもあります。
満室を想定した返済計画で借り入れを増やしすぎた結果、市場の変化にうまく対応できず、返済に行き詰まる場合があります。
アパート経営は、税金や管理費については経費として大した金額にはならないため、たとえ8割近くが空室になったとしても持ち堪えることが可能です。
しかし、「返済」という支出を抱えてしまうと、アパートの空室は大きな影響を与えてきます。この失敗を回避するためにも、自己資金は多めに用意しておくことが大切です。一般的に自己資金は建設費の30%程度用意しておくことが理想です。さらに安全値として、建設費の50%程度を用意しておくと安心です。
5.利回りの高い数値に踊らされている
初めてアパート経営を行う人に最も多い理由として、計画の段階で提示された「表面利回り」を鵜呑みにしてしまい、リスクや失敗を考慮しない計画を立ててしまい失敗するケースがあります。
基本的に表面利回りには「空室率」や「突発的な修繕費」といった要素は加味されません。
つまり「利回り計算」というものは、アパートが満室であることが前提で計算されているものになります。
しかし実際のところ、アパート経営において空室を抱えることは普通に発生する事態です。特に地方の物件であれば、なおさら空室のリスクを考慮する必要があります。
また、「利回り」の算出方法は賃貸需要を反映していないので、「利回り」の評価が実際の数値と異なることは往々にしてありえます。
アパート経営を失敗させないためにも、「利回り」の数値だけを指標にするのではなく、継続的な家賃収入が可能な物件なのか判断するために、地道なリサーチは欠かせないと言えます。
6.空室対策が失敗した
アパート経営の失敗には、投資目的で行った空室対策も挙げられます。空室対策の一環として、思い切ってリノベーションをしたにも関わらず、空室が埋まらなかったという失敗です。
1室をリノベーションし、デザイン性の高いカラークロスや耐久性のある床材に変えるだけでも約50~60万円ほどかかります。
また、浴室やキッチン交換などを行うと、約300万円前後かかることもあります。
例えば、家賃が7万円の部屋で60万円の投資を行うとなると、回収するのに半年以上かかってしまい、キャッシュフローを圧迫してしまいます。
そのため、なるべく投資的な予算がかからない空室対策を優先して行うことでリスク回避につながります。
▼例えば以下のようなものがあります。
- ペットの飼育可能物件にする
- 高齢者やシングルマザーなどの入居も認める
- 家賃のクレジットカード決済を導入する
- 管理会社を切り替える
- フリーレントを導入する
※フリーレントとは入居当初数か月間の家賃を無料とするサービスのことです。
7.管理会社選びで失敗
アパート経営の失敗の中には管理会社選びで失敗している場合もあります。
管理会社は、入居募集や入居審査、物件管理、家賃の集金などを行います。特に入居募集と入居審査が重要です。同じ物件でも、管理会社を変えると今まで決まらなかった物件が決まるということが実際にあります。
半年以上の長期的な空室が出ているにも関わらず、管理会社からの提案が何もない状況であれば、そもそも管理会社に問題がある場合があります。
少なくとも「インターネットの利用が普通になってきているので、ネット無料にしてみませんか?」や「設備更新してみませんか?」等の提案があっても良いはずです。
管理会社は普段から不動産取引を行なっているため、物件が決まらない原因がどこにあるか熟知しています。それにも関わらず、アパートオーナーに何一つ改善提案をしてこないというのは、切り替えを考える判断材料となります。
8.入居者トラブルで失敗
入居者トラブルによる失敗は、アパート経営とは切っても切れない問題と言えます。
▼例えば以下の入居者トラブルが挙げられます。
- 家賃滞納
- 騒音トラブル
- 部屋を激しく汚す
- 夜逃げ
- ペット禁止にも関わらず飼育する
- 楽器演奏
- 契約書に記載の無い人との同居
以上の入居者トラブルを回避するには、入居審査をしっかり実施する必要があります。
9.大規模修繕の資金不足
アパート経営を行う中で、大規模修繕の資金不足による失敗が挙げられます。
初期の計画段階で大規模修繕費用の積み立てを計画しておらず、必要な修繕が行えず物件の価値を低下させてしまうことがあります。
大規模修繕は、劣化や損傷が発生した時だけ行うものではなく、外壁塗装など建物の維持管理を目的として行う修繕もあります。
外壁塗装等の建物の維持管理を目的として行う大規模修繕は、必要なタイミングで行わないと建物の劣化を速めてしまうため、入居率を維持していくには計画的に行う必要があります。
それにも関わらず、大規模修繕を行うための資金が不足してしまう原因は、計画的に積み立てることができないことが挙げられます。
まずは、初期の計画の段階で「大規模修繕に伴う修繕費用の積み立て」もしっかりと考えておきましょう。
アパート経営のリスクを回避する方法
前述の失敗事例を踏まえ、アパート経営のリスクを回避する方法をまとめると以下の通りです。
- 立地を賃貸需要と照らし合わせて選定する
- オーナー提案をきちんと行なってくれる管理会社を選ぶ
- 無理のない修繕計画とメンテナンス計画を立てる
- 「表面利回り」を指標にしない
以上の点を意識して、アパート経営を成功させるためにはどのような施策が必要なのでしょうか。
最後にアパート経営を成功させる方法について解説させて頂きます。
失敗から学ぶ、アパート経営を成功させる方法
ここでは9つの成功させる方法について解説させて頂きます。
1.入念な立地調査
前述の失敗事例の通り、アパート経営成功の鍵を握るのは「立地」であるといっても過言ではありません。
物件の周辺にスーパー、コンビニといった施設が何もない土地にアパートを建設しても、空室は埋まりにくいです。
入居希望者が増えないアパートは自然と空室率が増加していきます。場合によっては、どれだけ家賃を下げても空室が埋まらないこともあります。
そのため、立地調査は非常に大切なことであると言えます。
▼立地調査のポイントは以下の通りです。
- 人通りはどのくらいあるか
- 近くにある施設(会社、学校、駅近など)
- 周辺のアパートの相場家賃や間取り
- 土地の所在する地元住民の特徴(単身かファミリーか、若いか年配かなど)
立地調査をすることで、どのようなアパートが需要があるのかを考える上で参考にすることができます。
また、立地調査の結果次第では、「入居が見込めなさそうなのでこの土地は止めておこう」という判断ができる場合もあります。
2.賃貸需要に合わせたアパートを建設する
入居者が住みたいと思ってくれるアパートを建てるためには、賃貸需要に合わせたアパートを建設することが大切です。
ファミリー世帯が多いエリアで単身向けのアパートを建設しても入居者が集まりづらいように、その土地周辺に住む人に合わせた間取りや外観を意識したアパートを建設することが重要です。
賃貸需要に合わせたアパートを建設するためには、先ほどの立地調査は必要不可欠です。立地調査をもとに、「ここのエリアに住みたい人はどんな物件を求めているのか?」を考えてアパート建設に役立てていきましょう。
この際、近くの不動産会社に、周辺アパートの空室率を尋ねてみるのもおすすめです。
3.収支計画に「予備費」を組み込んでおく
予想外の出費に対応するためには、あらかじめ余裕を持った収支計画を立てておくと良いです。
アパート経営の計画当初から修繕費用や修繕積立金などを見込んでいる場合もあると思いますが、それとは別に「予備費」「貯蓄分」といった形で、別途費用を見込んでおくことで経営にゆとりが生まれます。
4.定期的なメンテナンスとリノベーション
アパートは基本的に劣化します。それでもなお、入居率の高いアパート経営を続けていくためには、定期的なメンテナンスとリノベーションを行うことが大切です。
▼主に以下のメンテナンスは定期的に行いましょう。
- 点検業者や清掃業者に依頼し、配管や設備不良を起こしていないか確認。
- 必要に応じて改修・補強
20~30年に一度は、大規模修繕やリノベーションを行うことで、建物の美観を保ち、入居者が住みたい思ってくれるアパートづくりを心掛けることが大切です。
5.入居審査は必ず行う
入居の申し込みがあったタイミングで、その入居者をきちんと審査するようにしましょう。
その際、入居希望者の年収や勤続年数は必ず把握しましょう。
より慎重に審査を行う場合には、源泉徴収を提出してもらったり、勤め先に在籍確認を行うといった方法もあります。
また、入居の申し込みがあったタイミングで、入居手続きを不動産会社に任せるのではなく、自分の目で確認しておくことも大切です。
6.保証人か保証会社は必ずつける
家賃滞納は審査で人となりを把握していたとしても未然に防ぐのは難しいです。
そのため、入居者が家賃滞納をした場合にそなえて、連帯保証人か保証会社を付けるようにしましょう。
連帯保証人か保証会社を付けることで、万が一入居者が家賃滞納をした際も、その連帯保証人か保証会社に未納家賃の催促を行うことができます。
7.カード決済あるいは自動引き落としを導入する
家賃の支払いをカード決済か、口座自動引き落としにすることで、家賃の振り込み忘れを防止することができます。
家賃を滞納してしまう人の中には、振り込みを忘れているケースや、振り込んだつもりでいるケースもよくあるため、自動で家賃振り込みができる支払い方法に対応しておくことが大切です。
8.委託を検討している管理会社の管理アパートを確認する
委託を検討している管理会社の管理アパートを確認することもお勧めです。
共用部の管理や外壁の維持管理、空室対策の手法など、細かな部分まで管理が行き届いているかを確認することで、その管理会社の「管理の質」をある程度把握することができます。
内見に来たお客さんに選んでもらえなかったり、入居者に物件選びに失敗したと思われないように、「管理の質」が良い管理会社を選ぶようにしましょう。
また、普段の管理業務の質だけでなく、アパート経営のことや集客に関する相談までできる管理会社だとなお良いでしょう。
アパート経営は優良な管理会社に出会い、二人三脚で進めていけるパートナーを見つけることが重要です。
9.サブリース契約の条項はきちんと確認する
大手不動産会社やハウスメーカーとサブリース契約を締結する際は、契約条項をきちんと確認するようにしましょう。
契約書を隅から隅まで読むのは億劫かもしれませんが、しっかりと把握しないと損をするのは自分です。
▼サブリース契約で確認するべき点は以下の通りです。
- 修繕費や管理費用の負担区分(負担は不動産会社?オーナー?)
- 契約期間は?
- 家賃保証金額の変更は可能か?
- 契約解除をする際の手数料はどのくらい?
サブリース契約のトラブルになる原因の多くは、契約内容や契約書の確認を怠ったために、後々問題となるケースです。
トラブルを回避するためにも契約内容は最初の段階できちんと確認するようにしましょう。
まとめ
今回はさまざまな失敗事例と対策方法をご紹介しましたが、成功すれば大きな恩恵を受けることが可能です。しかしリスクも多いため、常にリスクと隣り合わせだということを意識しておくことが需要です。
これらの失敗を未然に防ぐためには、細かな情報収集や、突発的な支出を加味した資金計画が重要です。アパート経営を検討している人はぜひ本記事を参考にして頂ければ幸いです。