不動産業者が行うべき業務効率化とは?バーチャルテックや施工管理アプリの事例も解説!

不動産業者が抱える課題
内閣府が発表しているレポートでは、不動産仲介業に従事する者で、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は2013年には10.3%でしたが、2018年には6.2%まで改善できているといったデータが出ています。しかし、6.2%という数字は決して低くわけではありません。他業種に比べると、まだまだ高い数値といっても過言ではありません。
なぜなら、週60時間以上の勤務は、労働基準法の「週40時間以下」の規定を大きく超えているだけでなく、36協定によって定められている1ヶ月の残業時間も余裕で超えています。
このような背景もあり、不動産業界は離職率が高いです。つまり不動産業界において、残業時間の削減は大きな課題といえます。
引用元:内閣府 仕事と生活の調和レポート2018
業務効率化を希望する声
不動産業者の中でも、特に「不動産仲介業者」は業務内容が多岐に渡ります。顧客対応はもちろん、メールや電話での反響対応、さらには物件や顧客リストの管理、建物の修繕依頼、自身の売上管理、内見対応など 全てを一人で行うこともあります。
また、顧客対応のための休日出勤や、営業時間外の接客などもあります。
このような膨大な業務量を抱える一方、デジタル化(DX化)があまり進まないといったことも課題となっています。
例えば、手書きやエクセル入力で日報や帳票を管理したり、物件の募集図面をFAXで送ってくる業者も存在します。
業務内容が広い一方で、このようなアナログな部分が残っていることも、不動産業界が長時間労働である理由として考えられます。
このような背景から、実際に業務効率化を希望する声は多く、業務の効率化のために「長時間労働や残業の見直し」のほかに、「システムやツールの導入」を望む声が多い傾向にあります。
不動産業者におすすめの効率化できる業務
不動産業者で効率化できる業務は、大きく分けて「不動産・賃貸管理業務」と「仲介業務」が挙げられます。
その中でも、膨大な情報量を処理する単純作業は、ITツールの導入によって効率化が期待できます。
それでは、具体的にどのように効率化を進めていけば良いのかを解説させて頂きます。
1.不動産・賃貸管理業務
家賃回収、明細書発行
家賃回収と明細書発行については、様々な「家賃回収システム」が開発・販売がされています。
初期費用はサービスによって異なりますが、銀行口座と連携を行い自動で入金をしたり、入金確認後はボタン一つで入居費用の明細書や領収書を発行する機能などが付いているサービスもあります。
このような単純作業も人力で行うとなると、取り扱っている銀行ごとで残高確認を行ったり、明細書の項目を手入力しなければならず、そこに時間が取られ、ミスが発生する可能性がある、といったデメリットもあります。
一方で、ITシステムを導入すれば、基本的なデータ入力さえしておけば、自動で各項目が連動して自動入力されるため、ミスのリスクが少なくてすみます。
不動産オーナーへの報告書作成
不動産オーナーへの報告書作成についても効率化が可能です。
不動産会社の社員が報告書を作成する際、記入項目や分量に差が出てしまうケースがあります。稀にテンプレートや記入項目を定めている不動産会社もいますが、記入漏れや丁寧さなどにより、作成する人によって差が生れやすいことも事実です。
そこで、報告書を自動生成するツールを導入することで、過不足なく報告書を作成することが可能です。
契約書作成などの事務処理
契約書などの書類作成は、事務処理担当が会社PCに保存している「ひな形」を使うことがほとんどで、一から作成するケースは少ないため、現段階で不便さを感じていることはあまりないと思います。
しかし、ITシステムを導入することで、「いつ」「誰に」「どの契約書を送ったのか」を一目で確認できるため、契約時だけでなく更新時などの作業も円滑に行うことができます。
また、長期間の契約で、契約者本人が亡くなり、相続となった場合も、被相続人が円滑に詳細を把握できる、というメリットも挙げられます。
2.仲介業務
内見業務
不動産仲介の内見業務は、問い合わせの反響対応と物件の内見があります。
問い合わせの反響対応は、内見希望者の情報をITシステムに入力し管理することで、類似の物件を斡旋したり、申し込みから契約へと進んだ場合の手続きが円滑になります。
また、物件の内見については、遠方の物件だったとしても自宅で内見できる「オンライン内見システム」や「VR内見システム」などのツールがあります。
不動産売買仲介業
ITツールを導入することにより、不動産売買仲介業の業務効率化も期待できます。
賃貸の仲介と同じように顧客管理の業務工数を低減できるほか、MAツールを導入することで、類似物件のレコメンドや内見後のフォローメールを自動送信することができ、追客に割くリソースの削減が可能となります。
賃貸仲介と比べると、不動産売買は見込み客の検討期間が長期に渡るため、システム化のメリットをより享受することができるといっても過言ではありません。
物件入力作業
物件入力作業についても、ITツールを活用して業務効率化が可能です。
これまでは、紙データを原稿として物件入力を行い、内見希望の問い合わせがあった際には、その物件の仲介会社や管理会社に電話をして空室確認を行い、社内システムに反映する、といった物件管理を行ってきた不動産会社も多いはず。
しかし、この方法では膨大な時間取られてしまいます。
また、いくつか店舗のある不動産会社では、空室状況の反映にタイムラグが発生してしまうことも多々あります。
そこで、全社で一括管理が可能なシステムを導入することで、一度入力した物件情報や空室状況などは、すぐに確認することが出来るため非常に便利です。
不動産業者の業務効率化を実現した成功事例
それでは不動産業者がITツールを導入して業務効率化を果たした成功事例をご紹介させて頂きます。
事例1.バーチャルホームステージング(VHS)活用事例|エルももち株式会社様
まずは、福岡市早良区にある不動産仲介会社であるエルももち株式会様のVR内見活用事例をご紹介させて頂きます。
エルももち株式会様は、2020年9月にオンライン内見作成ツール「Spacely(スペースリー)」導入しました。
中古物件で居住中の場合、どうしても家具家電が置いてあり、生活感が出てしまうため、Spacely(スペースリー)の「バーチャルホームステージング(VHS)」を活用して、CGの家具でバーチャルコーディネートを行い、綺麗な写真で生活イメージを印象付けることに成功。
今まで不動産売却の一括査定で申し込みを受けた際、複数社で競合したときに、任せていただける確率はおよそ20%〜40%くらいを推移していましたが、Spacely(スペースリー)を導入してからは、3ヶ月近くは70%台をキープ。一括査定申し込みからの顧客獲得の確率があがりました。
事例紹介記事はこちら
事例2.施工管理アプリANDPAD(アンドパッド)|プロパティワコー株式会社
大分県大分市と別府市を中心にアパマンショップのFC加盟店として賃貸仲介・管理を手掛けているロパティワコー株式会社様の施工管理アプリ「ANDPAD(アンドパッド)」の活用事例をご紹介させて頂きます。
「ここの工事はどうなっているのか?」といった苦情が入居直後の入居者から入ることが多く、現場を確認すると退去後の「原状回復工事」の仕上がりが悪いことが多々ありました。
そして、原状回復工事の追加工事を行うことで、アパートやマンションの大家(オーナー)の負担が増えるといった、“三方悪し”の状況がたびたび起こっていました。
具体的な施工プロセス
まず、賃貸管理会社が実施する「原状回復工事」は、工事会社が工事指示書を作成し、クロス工事、設備工事などの職人に仕事を割り振りふります。
現場の職人さんは指示書に基づいて工事を行っていきますが、途中で指示書に書かれていない、例えば「エアコンの不具合」や「水道のパッキンの緩み」などに気付くこともあります。
しかし、指示書に書かれていない以上、勝手に工事をするわけにもいかないため、何か気付いたとしても、その場でスルーされる場合があります。
これは、明らかに「管理会社・工事会社・職人」とのコミュニケーション不足が招いている事態であるということを重く受け止め、施工管理アプリANDPAD(アンドパッド)を導入しました。
ANDPAD導入後の変化
ANDPADは、賃貸物件の退去から次の入居まであらゆる工程で使えるアプリケーションです。
まず、退去立ち会いの時に原状回復工事の見積書を作りますが、その日程をグループチャットで工事会社と共有することも可能です。
退去時にはチェック項目に基づいて、部屋の汚れや傷がどこにあるのか、それが入居者の故意なのか過失なのかどうか、故意過失なら工事費の請求をさせていただくといった現場で交わされた情報を記録する。もちろん、これもANDPAD内で全て共有できます。
こうして導入以後は、リアルタイムで現場写真が共有されるようになり、報告書も5分程度でANDPADで手軽に作成できるため、トータルで月600分(10時間)ほどの時間削減に繋がりました。
また、現場に行く回数も減ったため、原状回復工事における現場担当者の移動時間も削減できました。
今となっては、適切なコミニケーションを図りつつ、よほどのことがない限り現場へ行く必要がなくなりました。
事例紹介記事はこちら
まとめ
不動産業者は、他業種と比べても労働時間が多い業界です。
また、業務においてはデジタル化(DX化)があまり浸透してないという側面もあります。
そのため、業務効率化を推進する余地は十分にあるため、システムやツールの導入は非常に効果的だと言えます。
実際に導入する際は、目的を明確にし、実際に扱うこととなる従業員視点での利便性を考慮しながら選ぶようにしましょう。