新規事業立ち上げのプロセスとは?メリットやフレームワークを徹底解説!

新規事業立ち上げのプロセス
企業が新規事業を立ち上げ、事業を成功に導くためには計画性のあるプロセスを実行することが重要です。
具体的なプロセスは以下の通りです。
1.理念やビジョンを明確にする
新規事業の立ち上げに伴い、部署のメンバーが同じ方向に進むために、新規事業の理念やビジョンを明確にしておく必要があります。
よく、理念やビジョンは経営層やプロジェクトマネージャーだけが把握しているといった場合がありますが、組織のメンバーにも言語化して伝えるようにしましょう。
2.課題を見つける
前述の理念やビジョンと合わせて確認したいのが、消費者や社会が抱えている「課題」です。そして、発掘した「課題」を解決するための商品やサービスを新規事業とすることで、需要の高い消費者に求められる事業にしていくことが可能となります。
中には経営層が「やりたいこと」を事業化するパターンもありますが、その事業を消費者が求めてるとは限りません。
まずは、市場の中で顕在化(※1)されたニーズを見極め、「消費者や社会が何に困っているか」を軸に事業を考えていくことをお勧めします。
※1:顕在化とは、企業がリリースしている商品・サービスのことは知らないものの、自分のニーズや課題を解決するために、既にリサーチなどの行動を取っていることを示す言葉です。
3.事業領域を決める
続いては事業領域を決めていきます。
具体的には、「誰に、何を、どのように提供していくか」を決めます。この領域を明確にすることで、「狙っているターゲット層にどのようなアプローチを行うべきか?」といった戦略を立てることが出来ます。
事業領域の定め方には以下の二つの定め方があります。
物理的定義
「ダイエット食品をつくる」というように商品やサービス、技術など物理的側面から定義する方法です。物理的定義は何を作るかがイメージしやすい一方、事業領域を狭める恐れがあります。
機能的定義
「スポーツ選手をサポートする」というように商品・サービスの持つ価値の側面から定義する方法です。機能的定義はイメージしにくく曖昧なためメンバー内で認識の齟齬が生じる恐れがある一方、将来的に事業を多角的に展開しやすくまりメリットもあります。
4.市場性と事業性の双方を検証する
新規事業を考える際に「何をどんな計画で売っていくか?」と自分軸で考えがちですが、重要なのは市場性と事業性の双方を検証することです。
例えば、
- 市場性:「この事業はどのくらい需要がありそうか?」
- 事業性:「消費者はどんな課題を解決をしたがっているか?この商品は誰なら確実に購入してくれるか?」
というように、双方をリサーチすることが重要です。
参考までに以下の要素を把握しておくと良いです。
市場性
- 市場の特徴、構造
- 市場の成長性・将来性
- 市場に潜んでいる経営リスク
- その市場が成長するためのトリガーとなるもの
事業性
- ターゲット層の特徴
- ターゲット層が求めるサービスの条件
- ターゲット層のボリューム
- 他社競合のサービス
5.商品・サービスを作るための環境を整備する
経営を行う上で「ヒト・モノ・カネ」が最も必要と言われています。
例えば「ヒト」は、それぞれの役割を担うプロジェクトメンバーのことを指します。また、「モノ」については、情報やスキル、ノウハウが該当します。たとえ優れた新規事業のアイディアがあったとしても、それを形にする力が無ければ意味がありません。そして「カネ」は、新規事業の立ち上げに必要な資金や費用を指します。サービスの開発費や人件費などを考慮した資金調達を行う必要あります。
これらの要素を満たし、新たな商品やサービスを作るための環境を整備することも計画と合わせて構築していきましょう。
6.実行計画を立てる
前述までのプロセスを踏みながら新規事業のプランが明確になってきたら、具体的な実行計画を立てていきます。
ここで大切なのは無理のないスケジュールを設定することです。たとえば資金調達や新たな人材の雇用が必要になるなど、準備に時間がかかることもあります。そのため、無理のない日程で「いつ、誰が、何をするのか」を実行計画に落とし込んでいきましょう。
新規事業を立ち上げるメリット
続いては、新規事業を立ち上げるメリットについて解説していきます。
メリットは大きく分けて以下の3つです。
1.新たな収益源を確保できる
新規事業が軌道に乗り収益化に成功することで、「収益の柱」を増やすことができます。また、、増えた収益を経営資源(ヒト・モノ)に投資することで更なる成長や発展に繋げることができます。
2.長期的なリスクヘッジが期待できる
新型コロナウイルスによる外出自粛による規制やオンラインでの商談など、変化が急速に進む現代において、1つの商品やサービスの売上に依存するビジネスモデルでは事業自体が先細りしてく危険性があります。
そこで新規事業を立ち上げることで、多角的な事業展開が可能となり、長期的なリスクヘッジが期待できます。
3.優秀な人材の確保につながる
新規事業の立ち上げを積極的に行う企業には、それに共感した優秀な人材も集まりやすいです。また、既存の社員に新規事業のスタートアップに携わってもらうことでスキルやモチベーションの向上も期待できます。
新規事業を立ち上げる方法
新規事業を立ち上げる方法はいくつかありますが、大きく分けると以下の通りです。
1.ゼロから自社で立ち上げる
ゼロから自社で新規事業のアイデアを出し、事業計画の策定を行い、新規事業を立ち上げる方法があります。こちらは、自由度が高いうえに自社のペースで取り組めるほか、社員の育成にもつながります。
2.M&Aで新規参入する
M&Aで企業や事業を買収して新しい事業に新規参入する方法もあります。企業や事業を買収すれば、企業の資産や人材、技術力、ノウハウなどを手に入れることができます。また、M&Aであれば、新規事業のスタートアップにかかる時間や費用も大幅に削減できため、参入障壁の高い業界に参入できる可能性も高まります。
新規事業の立ち上げに役立つレームワーク
続いては、新規事業立ち上げる際に役立つフレームワークを5つご紹介します。
1.MVV
MVVとは、「ミッション(Mission)」「ビジョン(Vision)」「バリュー(Value)」の頭文字をとった言葉です。
それぞれの意味は以下の通りです。
- ミッション:企業・組織が果たすべき使命や存在意義
- ビジョン:企業・組織の理想像、中長期的な目標
- バリュー:ミッションやビジョンを達成するための具体的な行動指針、行動基準
MVVを定めることで、新規事業に対する共通認識が図れたり、事業が進む方向性を正しく判断できたりします。
▼関連記事
2.3C分析
3C分析とは、環境分析を行う際に活用するフレームワークです。
3Cとは、「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの頭文字を取ったもので、「顧客のニーズは何か」「市場規模はどのくらいか」「自社はどの部分で競合他社に勝てるか」などを整理することで、新規事業の具体的な内容を決めることができるフレームワークです。
3.VRIO(ブリオ)分析
VRIO分析(ブリオ)は「経済的な価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣可能性(Imitability)」「組織(Organization)」の4項目から、新規事業を分析することで「新規事業立ち上げた後にいかに競合に勝つか」などの戦略が立てることが可能となります。
▼関連記事
4.SWOT分析
SWOT分析は、新規事業の状況等を、「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)の4つの項目で整理して、分析していくフレームワークです。
業界のトレンドや他社競合の動向などの「外部要因」と、商品の品質や価格といった「内部要因」をプラス面・マイナス面に分けて分析することで課題を明確にし、対策を整理するために行います。
▼関連記事
5.ポジショニングマップ
まずマーケティング業界でいう「ポジショニング」とは、消費者の中で自社サービスと他社サービスが比較・検討のフェーズに入った際に、自社サービスの差別化ポイントや訴求ポイントを明確にしておくことを指します。
そしてそれをマッピング化したものを「ポジショニングマップ」と呼びます。
ポジショニングマップを作成することで、自社の新規事業のサービスや他社競合がどのポジションにいるかが一目で分かるようになり、差別化や優位性を図りやすくなります。
新規事業を立ち上げる際の注意点
最後は、新規事業を立ち上げる際の注意点を3つご紹介します。
具体的には以下の点に注意しましょう。
1.撤退のラインを決めておく
思うように軌道に乗らないようであれば「戦略的撤退」も必要ですが、今まで費やしてきた予算や労力を考えてしまい徹底に踏み切れない場合があります。しかし採算が取れない事業を続けていても赤字になるだけです。あらかじめ「ここのボーダーを切ったら撤退する」といったように撤退のラインを決めておくと良いでしょう。
2.最初からプロジェクトに関わる人数を増やしすぎない
必要以上にプロジェクトに関わる人数を増やしすぎると個々の意見が反映しにくくなり、意思決定のスピードが鈍くなる危険性があります。まずはスモールスタートで少人数から始めることをお勧めします。
3.新規参入のタイミングをしっかり見極める
事業を新規参入するタイミングは、需要が高く競争率が低いタイミングがベストと言われています。タイミングを間違えてしまうと、時間をかけて進めてきた計画も失敗する恐れがあります。市場のニーズや業界のトレンドは日々変化していますので、常に現状を把握し最適なタイミングで参入できるよう準備を進めましょう。
まとめ
大手企業や地方の中小企業など、企業の規模問わず新規事業の立ち上げにはリスクがつきものです。本記事では失敗のリスクを抑えるために知っておくべき、立ち上げのプロセスやレームワーク、失敗事例を解説してきました。
成功確率の高い事業を生み出すためには的確な市場分析や丁寧な前準備が必要です。しかしその反面、あまり準備に時間をかけ過ぎると、市場参入に出遅れてしまう可能性もあります。新規事業の立ち上げはさまざまな角度からリスク対策を行い、スピード感も意識しながら進めていきましょう。