【図解】マーケティングプロセスに必要なステージ設計とは?

Hachi(ハチ)マーケティング戦略室です。
不動産会社のマーケティング施策を「もっと」よくするアイディアマガジン「Hachi(ハチ)」を運営しています。
今回は、マーケティングプロセスのステージ設計についてお話をさせて頂きます!
この記事では、
- マーケティングプロセスについて
- 顧客のステージ設計
- マーケティング部門の評価指標
などを解説していきます。
「マーケティングのプロセスについて知りたい!」という方はぜひ最後まで読んでみて下さい。
目次
マーケティング部門は「オーケストラの指揮者」
最近のユーザーはオンラインでの購買行動が増えると同時に、様々なチャネルを自由に行き来しています。
例えば、
- ウェブサイト
- ソーシャルメディア
- メール
- モバイルアプリ
上記のオンラインのチャネルに加えて、営業担当者との商談、コールセンター、店舗、DMなど従来型のオフチャネルも存在します。
そのような環境でマーケティングが担う役割は「オーケストラの指揮者」に例えることができます。
従来、マーケティング部門は「商談を作るまで」が役割とされていました。
しかし、現在はカスタマージャーニー全体をサポートする役割に変わりつつあります。
商談前のリードから、商談中の見込客、購入後まで、あらゆる顧客ステージにおけるコミュニケーションの指揮者としてマーケティングは機能しなければいけません。
オンラインの情報が圧倒的な勢いで増え、チャネルが多様化する中で、企業内の担当者は営業と接点を持つ前に情報収集の大半を終えています。
これは企業にとって、大きなチャレンジと言えます。
企業は一度も接点を持てぬまま、商談の場にすら立てないということが起こり得るからです。
マーケティングオートメーション(MA)の登場
これまでは、
- ウェブサイトのフォーム入力
- 展示会で集めた名刺から得られる会社名、役職、メールアドレス
などの属性情報をもとに営業が手作業でフォローするしかありませんでした。
しかし、マーケティングオートメーション(MA)が登場してからはそれらの属性情報だけでなく、
- ウェブサイトへのアクセス数
- メールの開封・クリック
などオンラインチャネルの行動情報をトラッキングできるようになりました。
その中でも最も大きな変化が起きているのは、マーケティングコミュニケーションと言えます。
例えば、
- フォームに入力する前の匿名状態で、どのようなコンテンツを見てからフォームに入力したのか?
- ウェビナーを視聴した後、どのくらいの頻度でウェブサイトを閲覧しているか?
など、匿名状態も含めて顧客行動とその文脈を把握することができます。
これは、見込客が関心を持つ内容、興味の度合いなどを推測するための情報が格段に増えることを意味します。
インサドセールスや営業が相手にコンタクトする時も、事前の予備知識が増えるため会話もスムーズに運びやすい利点があります。
また、人間がフォローしていなくても、MAが関心のありそうな情報を選び、パーソナライズして見込客に提供してくれます。
つまりMAとは、「マーケティングの自動化」というより、「24時間365日休まず働いてくれる有能なマーケティングと営業のサポート部隊」というほうが適切かもしれません。
マーケティング部門がカバーする範囲は拡大し、チャネルや施策も多様化しているが、それらに対応できるのは、MAというデータを活用したプラットフォームが登場したからだと言えます。
提供コンテンツの変化
このようにMAの活用によって、コンテンツを提供する方法も変化しています。
ひと昔前は、
- 無料トライアル
- 事例集
- デモ動画
など、なんらかの資料を見たいと思ったら必ずフォームへの情報入力を要求されました。
「何か情報がほしければ、あなたの連絡先を教えてください」というやり方です。
これは、検討段階において企業に主導権がある状態です。
しかし、オンラインで製品や業界の情報があふれる現在、情報の収集と選択の主導権は顧客に移っているといっても過言ではありません。
もはや自社のウェブサイトに訪れた見込客に対して、門を閉ざすような情報提供では立ち行かなくなってきています。
マーケティングプロセスをステージごとに設計する
現在ではある程度の情報は公開していきながら、より詳しい情報を求める時にはフォーム入力を求めるというように、ステージに応じて、中身を分けて提供していくやり方が主流になっています。
それを表したのがこちらの図です。
ここでは、見込客の検討ステージを初期・中期・後期に分け、それぞれ企業側がどう対応すべきか、そのためにどんなコンテンツを提供すればよいのかもまとめています。
匿名状態でもサイト上の行動はトラッキング可能なので、検討初期では無理にコンタクト情報を取得することなくコンテンツを見てもらうことができます。
次に、検討が具体化した時に見るであろうコンテンツについてはフォーム入力を要求し、確実にコンタクトできるようにします。
この時点で、その人が検討初期にどのようなコンテンツを見ていたかの情報も結合すると、見込客の関心についてより深いインサイトが得ることが出来ます。
検討後期のコンテンツについては、すでにコンタクト情報を取得していれば再度フォーム入力を求める必要はありませんが、最初から購入意欲が高く、いきなりこのステージのコンテンツを見ることもあり得るので、ケースバイケースでフォーム入力を求めるようにします。
企業側は自社のコンテンツを整理し、どのような検討ステージの見込客がそれを必要としているのかを考慮して、パーソナライズした情報を提供する仕組みを用意する必要があります。
顧客ステージを設定しても測定できなければ意味がない
ステージ設計のポイントは「測定可能にすること」と説明しましたが、これまでのマーケティングにおけるチャレンジは、まさに「測定しづらいこと」にありました。
たとえば「購買興味」というステージを設定して、「製品を購買することに興味がある状態」と定義したとしても、測定できなければ意味がありません。
肝心なのは、見込客が確実にそのステージにいることを判定する客観的な指標を得ることです。
それができれば、感覚でなく、今どのステージにどれだけの見込客がいるのかを把握できます。
以下の図はその一例です。
- まず、メールアドレスなどの情報を取得できれば、「リード獲得」のステージへ。
- その中でメールのリンクをクリック、製品サイトへのアクセスなどなんらかの反応を示した場合は「リード育成」のステージへ。
- さらにカタログ請求や直接の問い合わせ、リードスコアが100点以上を「有望リード」とみなします。
しかし、「そのようなレベルで本当に顧客の検討ステージを測れるのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
もちろん完璧なロジックや数字の分析ができればよいですが、サイト上で同じ行動をとった人がいたとしても意図はまったく異なる可能性があります。
ただ、そこで完璧さを求めて前に進まないよりは、見るべきものを決めて定点観測するほうがはるかに得られるものが多いです。
まずは一度基準を作り、定点観測するところからスタートしてみるのがおすすめです。
全体プロセスとファストパス
また、見込客はステージを1つずつ順番に進んでいくとは限りません。
たとえば、明確にターゲットとしている企業が自社イベントに参加した場合、「リード育成」のプロセスを経る必要はなく、すぐに営業がアポイントを取って面談することもあります。
あるいは、すでに競合他社との比較を進めている場合、最初から具体的に見積がほしいと言ってくるケースもあります。
このような場合は途中のステージを飛ばして、いきなり「有望リード」として商談化のプロセスに入ります。
このようにステージを飛ばすルートを「ファストパス」と呼びます。
また、インサイドセールスが会話をしたものの、すぐには商談にならなかったリードや、営業が失注してしまった商談は日々蓄積されていきます。
これまでのマーケティングファネルのモデルではそれらを管理する概念はありませんでしたが、実はこれらをどうフォローするかが今後のマーケティングの成否を分ける鍵になってきます。
THE MODELで紹介されているマーケティングモデルでは、それらを再度マーケティングの対象とするために迂回路を作り、再度リード育成のプロセスに戻す道を作っています。
つまり「リードをリサイクルする」という考え方です。
たとえば営業が商談化したけれど、当面検討が進まなそうな場合は、一度リサイクルの箱に入れて、プールしておきます。商炎也こ十し
また、「当分検討は中止します」という顧客には、一定期間メール配信を止めます。
商談で検討中止を告げられたのに、その翌日からまたメール配信がなされたら鬱陶しいと思われてしまうからです。
逆に、一度失注した企業から数か月後に頻繁にウェブサイトへのアクセスがあれば、すぐに営業に通知してフォローします。
また、自社製品やサービスを購買する可能性がない学生、競合、退職者などのリードデータは「マーケティング対象のリード」とは明確に切り分けたほうが良いです。
これらのリードは「育成対象外」というステージに移行し、リサイクルするのではなく、そこで終わりにします。このようなステージを「デッドエンド」と呼びます。
プロセスごとにみるフローと残高
実際にこれらを管理する時には、下記の表のような形でステージごとのフローと残高を管理します。
「フロー」とは各ステージを通過した件数です。
「残高」は各ステージに滞留している件数を表します。
- 例えば、新規リードを1万件獲得したとして、「リード育成」へ進むのが70%の場合7,000件。
- 「育成対象外」が10%で1,000件がデッドエンドへ。
- 差し引き2,000件は「リード獲得」に残高として2,000件残ります。
- 同じように、次のステージに進む確率をCVR(コンバージョンレート)とし、フローと残高を確認していきます。
- ポイントは「迂回路」である「アポイント/訪問」や「商談」から前に進まなかったものが「リサイクル」に落ちてくる点です。
- リサイクル(A)とリサイクル(B)のCVRを改善すればするほど「リード育成」に戻せるリードが増えます。
概念だけを表したファネルの図よりも、はるかに実践的な内容になっているのでおすすめです。
正直なところ、実際のビジネスで、ウェブサイトの訪問者数とフォーム入力によるリードだけを見ていても、まったく参考になりません。
迂回路とデッドエンドも含めたステージを定義し、単月のフローの数字ではなく、残高を見るようにすれば、どこにボトルネックがあるか、どこをテコ入れするのが最も売上に反映しやすいのかが手に取るようにわかります。
マッピングを行い必要な施策を実装する
マーケティング部門はリードを獲得しなければならないといったプレッシャーなどから、セミナーを開催しよう、デジタル広告を打とう、新しいキャンペーンを実施しよう、というように施策から考えてしまいがちだが、これは順序が逆です。
マーケティングコミュニケーションの目的は、見込客を次のステージに進めることです。
顧客ステージを定義した後に、次のステージへ動かすためには、どのようなチャネルが有効なのかを考えるのが正しい順序であると言えます。
まずは以下の図のようにマッピングしてみましょう。
マッピングできたら、施策の実行です。
まずは図のように、ステージごとに有効なチャネル
セミナーというチャネルひとつとっても、事前の案内、申し込み、参加、セミナー実施後のフォローアップというプロセスに分解されます。
どのセグメントに案内を行い、それぞれどのステージまで進んだのかを計測します。
また、セミナー案内のメール、参加リマインドのメール、フォームでの登録などのコンバージョンを調べることによって、その施策の効果が検証できます。
このように顧客ステージ、チャネル、施策の関係が理解できるとマーケティングを可視化するイメージが湧き、どこから手をつければよいかがはっきりわかるようになります。
マーケティングの評価指標
最後にマーケティングの評価指標について考えていきましょう。
マーケティング部門が見るべき指標(KPi)の本は山ほど出ています。
インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスといった他部門と比較しても、マーケティングはデジタル化が最も進んでいて取得できるデータが増えているため、指標の数は圧倒的に多いです。
それにも関わらず、いまだに「マーケティング部門の売上に対する貢献が見えない」と言われてしまうのはなぜなのでしょうか?
理由の1つは、ここまで説明してきた「顧客ステージの設計」という概念がないまま、施策のみ走ってしまっていることが考えられます。
もう1つ考えられるのは、現場の担当者目線での指標をもとに経営層に説明しようとするからということもあります。
担当者はクリック率や施策のコンバージョンなどについて、こう数値が改善した、このような効果が出たと説明しがちです。
しかし、経営陣からすれば、それらがどう売上につながるのかがわかりません。
そのため、マーケティング部門が数字遊びをしているように思われてしまいます。
一方、現場の担当者は経営視点を持たないために、自分たちのやっていることが理解されないと考えてしまいます…。
こうした不幸な状態を回避するためには、ステージ、チャネル、施策の概念を整理し、経営層、各部門長クラス、担当者のそれぞれが、どの指標を見るべきかを整理することが重要になりますのでぜひ参考にして頂ければと思います。